『化物語』第1話感想

 今回の話では、登場人物の眼球が強調されていました。このことには、世界という立体が視覚によって平面化されている様を描く、という意味があるのでしょう。前半のほとんどは、校舎において展開するわけですが、そこは、縦横の直線で構成された、極めて整然とした空間として描かれています。だからこそ、そこで「バナナの皮を踏んで転んだ」というひたぎの台詞が、マクガフィンマクガフィン性を前面に押し出した際どいギャグとして働くわけです。さて、ひたぎが相当数隠し持っている文房具は、基本的には、秘密を知られた相手に沈黙と無視を強制するためにではなく、整然とした空間をノートという平面上に構成するために使われます。ここで文房具=眼球と乱暴に重ね合わてしまうとすると、ひたぎを(雑然とした場所に居る)忍野に引き合わせる際、主人公が彼女に文房具を捨てさせるのは、眼球潰し=去勢であると同時に、この場所においては視覚よりも聴覚を重視しろと教えているのだと言えるでしょう(建物に入った途端、二人の会話がノイズィになって強調されますし、そこにいる「無言・無音」の子供は、「いない」存在として扱われています)。
 さて。なにはともあれ、前評判通りの非常に素晴らしい出来でした。これが新房×シャフトの最高作となることを願ってやみません。