2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『平成願虎之巻』田中公威

1. 昼休みの教室でぐーすか寝ていたら強烈なビンタを十数発張って叩き起こされたあげく、大量の睡眠薬を飲まされた。 何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何されたんだか全然わかんない。 わかっていることはふたつだけ。 ひとつは、俺が眠りに落ちる…

『清十郎たち』日向敏

仇討ちが終わったあと、佐々木清十郎にしたいことはなかった。もちろん、当日は盛大に祝賀されたし、自分でもひとかどの人間になれた気がしたものだ。墓に参り、父よ敵は果しましたどうぞ御霊安らかにお眠り下さいと涙を流したのも嘘ではない。墓は、家臣で…

『相馬から憎しみをこめて』正田展人

うちはおかしいということにこの頃気づきはじめた。 お母さんとお父さんの、僕に対する態度が、ほかの家と全然ちがうみたいだ。 記念日とかテストで100点取ったとか、そういうことがあるとステーキが出てくる。そんなにいい肉でもないけど、お母さんはけっこ…

競作企画「真・相馬の仇討」

●企画趣旨 わぁい著作権 あかり著作権大好き!著作権が切れている直木三十五「相馬の仇討」をよってたかって翻案してしちゃお! リスペクト古典!

『相馬の仇討:江湖版』前編 楊生みくず

※年号のみは実在のものを使用しておりますが、人名・地名はすべて架空のものであり、万一実在のものと一致した場合もこの作品とは一切無関係であることをご了承下さい。【真・相馬の仇討ち――表】 一、 木家荘(ぼくかそう)荘主の木軍(ぼく・ぐん)といえば…

『相馬の仇討:江湖版』後編 楊生みくず

【真・相馬の仇討ち――裏】 それまで、荘主と呼ばれながら、仇を討つまでは――と、実質的に木家荘を継ぐことを先延ばしにしてきた木清であるが、その仇を討ち、とみに高くなった江湖での声望に応える意味をもかねて、天下の英雄を招いた宴のひとつでも設けよう…

『ある日、ニンジャ・ガールが落ちてきて。』川口健伍

深い眠りに落ちている。そのことを俯瞰している自分がいることを三条門菅流(さんじょうもん・すがる)は知っている。一般に幽体離脱と呼ばれるらしいが、菅流はこれが夢の続きであることを知っている。羽毛布団に包まっている自分を見下ろしていると、視線…