ストーリーメイク4月25日版

今回は以下の条件で作成しました

主人公過去:信頼
主人公現在:創造
主人公未来:庇護
結末目的:寛容
援助者:結合の逆
敵対者:意思の逆


正田:「永遠の婚約」

○登場人物
上尾伸二(あげおしんじ):坂戸盛花と付き合って3年、そろそろ結婚を告げようかなと考えていた矢先に坂戸盛花死亡。
坂戸盛花(さかともりか):殺された。
盛花父親:娘を失ったがどうにかこうにか自分を保っている。
盛花母親:伸二と盛花の仲を応援していた。殺害されたことでショックのあまり倒れた。
桶川(おけがわ):その場の思いつきで坂戸盛花を殺害。


○あらすじ
 今日は何度目かわからないデートで、上尾伸二は駅前の広場で坂戸盛花を待っていた。『今電車に乗ったよ。あと20分。』というメールを30分前にもらった伸二は、どうやって「結婚しよう」と言うべきか悩んでいた。指輪も用意しているし、たぶん何かよほどの間違いがなければ盛花は指輪をもらってくれるはずだった。もう一度時間を確認するとさらに20分も過ぎていた。そんなに考えこんでいたのかやべえな俺、と思っていたら広場の近くを救急車とパトカーがサイレンを鳴らしながら通過していった。彼の中で急に胸騒ぎがした。
 坂戸盛花の父親から電話で「盛花が刺されて死んだ」と知らされた伸二は何も考えられずしばらく呆然とした。もう二度と二人は会わなかった。
 盛花は電車の中で何の前触れもなく突然刺された。しかも短時間で5か所だったためにほぼ即死だった。『死因は出血多量の即死で……』とわざと残念そうに言うアナウンサーの声が上尾の耳に刺さった。桶川容疑者は盛花を刺したあと逃げることなく車内でしゃがんで真っ赤になったナイフを見つめていたという。どこから嗅ぎつけたのか坂戸家のみならず上尾家にもマスコミが現れた。「近々ご婚約しようとされていたそうで、たいへん御気の毒です。お気持ちをお聞かせください。桶川に言いたいことはありませんか」とマスコミが玄関で大声をあげていた。伸二は家を出ることができなかった。自室で頭を抱えていた。だが、彼の怒りも頂点に達した。
「僕はいいが、盛花のことをテレビでさらすのはもうやめてください」と玄関を開け放ち、カメラをいっせいに構えたマスコミに怒鳴った。その映像がその日の夕方のニュースで流れて、盛花の父親から再び電話があり、「ありがとう」とだけ告げてきた。
 マスコミの関心は被害者側から加害者側に移った。桶川という男の異常性があまりに際立っていたからだ。盛花や伸二の姿をテレビで観ることはなくなった。「だれでもよかった。ナイフはいつも持っていた。なんだか急に……」という桶川の言葉が垂れ流された。
 伸二はようやく盛花の家へ行く決心がついた。訪ねてみると父親が玄関を開けて招き入れた。
「女房も君には感謝しているんだ。でも、ちょっとなあ、あまりのことで」
 何度か会ったことがあった。『盛花ったらいつもあなたのことばかりなの。どう、そろそろ』という会話が思いだされた。そんな母親の姿は見えなかった。和室に案内された伸二は体が固まった。久々に盛花の写真を見たからだ。しかもそれは白黒の遺影だった。10分以上も遺影を見つめた。
「桶川でしたっけ、犯人のことは許す許さないじゃないです、もうどうしたって戻ってこないのですから。でも、盛花のことは絶対に忘れません。忘れられるわけがない。僕は、ずっと思い続けますよ」
「私以上に、盛花のことを。いつまでも思い続けるのは君のためにならん、あのな……」
「いいえ。忘れたら死にます」
 伸二の悲痛な思いをぶつけられて父親はふらつくような感覚に襲われた。だが、伸二の肩を強くつかんだ。
「聞いてくれ、盛花は君との結婚を考えていて生活をどうしようかいろいろしゃべっていた。君のことを絶対に幸せにしてあげると言っていた。なぜなら君が幸せにしてくれるからだそうだ。頼むから、幸せになってくれ。盛花はそう願っている。そうだ、盛花の分も幸せになってくれ。なあ、頼む」
 父親の真っ赤な目を見ることができず伸二は眼をそらした。父親も伸二もただひたすら生きるしかなかった。


川口:「ヒーリング・ワークス」

 主人公は冷たい感じの女性で、一人称の語り、あまり自分に興味がない、けど美人。
 自社ブランドで雑貨を作って委託販売やネット通販を行っている。作品だけでなく、製作者自身にもファンがついている。パステルややわらかいタッチの作品を作っているのだけれど、不意に猛然と作りたくなる作品があって、それがどうしても死を匂わせるような、とても暗いイメージの作品となっていた。彼女にはかつて信頼して一緒にブランドを切り盛りしていた恋人兼共同経営者がいたのだが、無惨な交通事故で亡くなっており、無意識のうちにそれを向きあおうとしていたのだった。しかし作風がまったく違うため、一緒に売ることができず、それ見かねた委託先で彼女のファンの店主が、変名でもうひとつブランドを立ち上げたらどうかと提案し、彼女はそれを聞き入れる。そのブランドの庇護の下、彼女は作品を作りづけることで自らを癒して、かつての死を受け入れていく。