ストーリィメイク(2月16日版)

条件を無作為に設定し、その中でキーワードを必ず使用したあらすじを考えてくるという神々の遊びです。今回は、以下の条件とキーワードでストーリィを作りました。今回の参加者は正田だけ。

主人公(過去):治癒〈逆〉
主人公(現在):秩序〈逆〉
主人公(未来):知性〈逆〉
結末・目的:至誠〈逆〉
援助者:調和
敵対者:清楚〈逆〉
キーワード:【掃除機】


    ※


正田展人「真銀河第2章5幕」

○登場人物
川村聖子(かわむら・せいこ)……スイゲン株式会社秘書課員。新世代。性格はどこにでもいそうな普通のもの。明るく振る舞う部分もあり、親しみやすい性格だが、騙されやすく、嘘や噂に振り回されることもあり、それが今回は仇となる。


吉岡一郎(よしおか・いちろう)……スイゲンを設立しようとしていた岩瀬川姫透たちに協力していたが、裏切られて現在はスイゲンに復讐しようと活動している。


○用語
スイゲン株式会社……2004年創業。本社小松島。工場は各国に分散。自動車用液体水素燃料を生産販売し、世界にエネルギー革命をもたらした。各国で上下水道事業も手掛けており、人間社会にとって必要なエネルギーと水を一手に握ることで、世界の支配を目論む。ゆくゆくは年間売上100兆円を目指す。スイゲンという社名は、水源という漢字をもとに水素と水、それらの源という意味を包含したもの。

秘書課……執行役等重役の護衛も仕事のひとつだが、会長の護衛がすべてに優先する。新世代の中でも特に腕の立つ者が何人か配属されている。

新世代……人造人間。スイゲンが内緒で生み出し、従業員にするため養育している。能力には個体差もあるが、基本的にはほとんどの新世代が身体能力において人間よりも優れている。世間に存在がバレないよう、社会に溶け込ませるのがたいへん。会長個人のために絶対の忠誠をもって働くように細胞単位で刻み込まれている。会長は不死なので、その不死の能力に反応して忠誠をもつような構造になっており、そのことが同じく不死である吉岡一郎に寝返らせるきっかけとなっている。一部の新世代は吉岡に誘われ、スイゲンを裏切る。吉岡に誘われても断るように新世代を改良中。

会長……スイゲンの社員が由部殿尚人という青年を呼ぶときの通称。彼こそがスイゲンの最高権力者であり、彼の欲望の赴くままにスイゲンが動いてきた。彼を社長にしてしまうと、社会の表舞台に出なければならなくなるので、身を隠すために社長などの座には就いていない。

岩瀬川姫透……由部殿尚人の前に突然現れた。人類がまだ持たない知恵もあり、それを使って、由部殿のために活動している。


○あらすじ
「銀河」という物語の中の一場面。
「僕につかないか。スイゲンなんてところで窮屈な思いをするより、僕といるほうが楽しい」
吉岡は倒れている川村に静かな口調で語りかけていたが、それが一変した。吉岡が過去のことを口にし始めたのだ。川村は、吉岡の足元で身を横たえたままで、頭からの出血が止まらず意識がもうろうとしている。
「姫透って女は最低のクソビッチだ。僕に散々やさしくして、いい女を演じていたからコロッと騙されて協力してみりゃ、突然グサリ、僕を殺した。でもどうだ、その前に不死になったからな、オメカス女の思い通りにはならなかったぞ。今じゃスイゲンは世界中から利益という利益を掃除機みたいに吸い取って、掃除機が通ったあとはほこりを巻き上げやがる。ああ、だめだな、姫透のことを思い出すと汚らしい言葉しか出てこない。さて、川村さん、どうかな、僕についてくれる気になったかな。由部殿尚人よりはいい思いをさせてあげられる。それに、言うだろう、鶏口牛後って。君はスイゲンに留まるべき新世代じゃない。もっと大きなことをやろう。じゃなきゃ、君も僕のようにそのうち捨てられる」
 川村はふと、どうにでもなれ、と思った。この状況はどうしようもない。足に力が入らず、腕も痛くて、指しか動かせない。あまりにもひどくやられてしまった。それに、「捨てられる」という彼の言葉が響いた。
 意識が落ちたように、彼女の視界は真っ暗になった。何も考えられなくなった。頭の中が真っ暗になった。
「私は、あなたに、ついて、いきます」
 再び開いた彼女の眼に、意識のある輝きはなく、このセリフもただ言わされて出たようなものだった。
 吉岡は膝をついて、川村を抱きかかえた。「ありがとう」と川村の耳元でささやいた。彼が強く抱きしめた。川村は顔をしかめたが、「今、あなたに抱かれて、一体感があります」とのどから絞り出すように言った。