ストーリィメイク(2月6日版)

今回は、以下でストーリィを作りました。

主人公(過去):幸運〈逆〉
主人公(現在):節度
主人公(未来):理性〈逆〉
結末・目的:慈愛
援助者:変化〈逆〉
敵対者:寛容
キーワード 【バナナ】


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津雅樹「バナナひと皮」

※スプラスティック・コメディ

○キャラク
奥村喬(おくむら・たかし)……主人公。大学生(1回生)。所属したサークルで出会った竹内真理に恋をする。しかし、高校時代の恋愛の失敗の痛手からド奥手になっており、なかなか踏ん切りがつかぬまま、彼女との外堀をなんとか埋めようと毎日を送る。が、同時に山上多恵にやさしく惚れられてしまい、コロリとそちらになびきそうにもなるが、多恵のある一面から彼女を(表面上はやんわりと)煙たがるようになる。


竹内真(たけうち・まり)……大学生(1回生)。自他に厳しい理系女子。ショートカットと、一見地味目な服装がトレードマーク。いわゆるクーデレ。所属したサークルで、いつしかその小世界の中心に(物語的に)立ってしまう。人ごみと山上多恵をあまり好きでない様子で、できるだけ避けている。目に異物(コンタクトレンズ)を入れるのを恐怖する故メガネ。バナナが大好物で、バナナを食すときだけは表情が和む。


山上多恵(やまがみ・たえ)……大学生(1回生)。「ひとにやさしく!」がモットー。ハイレベルな外観の持ち主。所属したサークルで出会った奥村喬に恋をし、持ち前の前向き精神でモーレツにアタックを開始する。とある宗教に執心しており、彼女がそのシビアな価値基準でもって気に入った相手には、勧誘を怠らないため、一緒に天までハッピィになろうよ、なむなむ、と彼を篭絡せんとする。ある意味ヤンデレ。バナナに目がない。


神崎実(かんざき・みのる)……大学生(3回生)。サークル内でも慕われる、いろんな意味で勝ち組マン。所属するサークルにやってきた竹内真理に恋をする(でも、表には出さない)。彼女と同じ学部学科であるのを武器に、虎視眈々と距離を詰める。


青木敬二(あおき・けいじ)……大学生(1回生)。オール・ニード・イズ・リテラチャ! と言い切る、イマドキ珍しい文学系男子。所属したサークルで出会った奥村喬と意気投合し、彼の良き相談相手となる。サリンジャーの死にショックを受ける。


森林太郎(もり・りんたろう)……大学生(?回生)。サークルの長。年齢不詳の年長者。おっとりとした雰囲気を醸し出す癒し系。名前を「しんりん・たろう」と間違われてはブチギレしている。



○ストーリィ
上記のような人間関係の只中に入ってしまった奥村喬がいかにして意中の竹内との外堀を理性的たるようにして埋め、かつ、しつこな山上を恋愛的にも宗教的にフッた上で、竹内に対してガツンと告白し、受け入れられるかまでを描く。クライマックスは真冬の期末試験くらい。

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正田展人「真銀河-第2章7幕」


○登場人物
:スイゲン株式会社社長。欲望をむき出しにして、スイゲンの拡大その他諸々を企んでいる。外部に顔を出したことがなく、マスコミへの露出もないので、一応外出は自由。このあらすじは『俺』の一人称で進む。


井高香奈子:秘書課員。善悪の判断はつくが、判断したあとの行動に難あり。表情が乏しく頭悪いものの、身体能力が極めて高いので秘書課に配属された。新世代。まあまあかわいいのではないか。


:40代でやくざ稼業。やくざなりの収入あり。生活保護を役所から無理やり受給している。




○用語
スイゲン株式会社:2004年創業。本社小松島。工場は各国に分散。自動車用液体水素燃料を生産販売し、世界にエネルギー革命をもたらした。各国で上下水道事業も手掛けており、人間社会にとって必要なエネルギーと水を一手に握ることで、世界の支配を目論む。ゆくゆくは年間売上100兆円を目指す。スイゲンという社名は、水源という漢字をもとに水素と水、それらの源という意味を包含したもの。


秘書課:社長等重役の護衛も仕事のひとつ。新世代の中でも特に腕の立つ者が何人か配属されている。


新世代:人造人間。スイゲンが内緒で生み出し、従業員にするため養育している。能力には個体差もあるが、基本的にはほとんどの新世代が身体能力において人間よりも優れている。世間に存在がバレないよう、社会に溶け込ませるのがたいへん。社長個人のために絶対の忠誠をもって働くように細胞単位で刻み込まれている。


電車:舞台はJR牟岐線車内。現実では単線で気動車だが、スイゲンは、JR四国を手中に収め、ほとんどの路線を電化、高架化、複線化、標準軌化、高速化し、運賃も大幅に改めた。




○あらすじ
2012年。スイゲンの社長をやってる俺は、徳島市内で開催されているイベントに出かけようとした。会社の車がすべて使用中で、自分の車も乗り回されていた。そこで、たまにはいいかなと思い、電車で出かけることになった。俺にはいつも秘書課の者が護衛としてつくが、今回は、井高香奈子がついた。こいつは新人だそうで、どおりで俺はこいつを全然知らなかったが、秘書課長は井高のことを知っていて今日の護衛に井高を選んでいるはずなので、信用した。護衛がいてもいなくてもきっと大丈夫なのだが、常に万一に備えている。


平日朝なので、乗客は多く、座席に座ることはできなかった。電車にはたまにしか乗らないが、電車でたばこを吸うなんてありえないことくらいは知っていた。だいたい俺は乗り物大好きで、軽度の乗り鉄だ。しかし、今日に限って最悪の客がいた。たばこを堂々と吸う男がいた。4人が座ることのできるボックスシートに、そいつはひとりでドカーンと座っていた。40代くらいで、くしゃくしゃの髪で色メガネをかけていた。向かいの席に靴のまま足をのせていた。顔もこわそうなので、客は皆うつむき加減だった。電車はワンマン運転だから注意しにくる車掌もいなかった。


男を見つけた瞬間、(うわあ、こいつやっちまってんなあ、それにしてもすげえことするなあ、こんなやつおるんやなあ)と思いつつポカンとしていたら、井高が動いた。男の右手からたばこをサッと取って、男の鼻の穴に突っ込んだ。突っ込まれていくたばこは白い紙がバナナの皮のようにめくれていき、火のついた部分と灰と紙に包まれている茶色い葉が穴へぶちこまれていった。男は「何をしよんな」と言いたかったのだろうけど、「何」を言い終わるまでに起きたことだった。男は、声にならない声を上げた。熱かったし痛かったのだろう。座席から飛び上がるように立ち、井高の胸倉をつかもうとした。男の伸ばした腕は、井高の右手がつかみ、井高の左手が男の耳たぶをつかんだ。俺はずっとポカンとしていた。ああ、もうだめだ、井高はきっとそういう子なんだ、と脳内で処理していた。
男は、ぎゃああと叫んだ。耳たぶをこれでもというくらい引っ張られたらどんなやつでも悲鳴を上げると思う。男は、井高の強さをすぐに理解したようで、少しじたばたしたが、ボックスシートから転げるように飛び出して、次の駅に着いたら全力で降りていった。


俺と井高は終点の徳島で降りた。改札口を出ずに、プラットホームの先端へ井高を連れて他の客がいなくなったところを見計らって、グーで殴った。殴った俺も痛くて、手をさすった。井高はきょとんとしていた。「あのさあ、ああいうことしたら目立つでしょうが。やめてくれるかな」と言ってやったら、「社長の命令で、電車は様変わりしてとてもいいものになったのに、それであんなことをされたら誰だって怒ります。この電車は、私たちにとって大切なものでしょう」たしかにそうなのであり、思い入れがあるからこそ鉄道にかなりの力を注いで変えた。「いやいやいや、それとこれとは違うからな。他に客がたくさんおるし、あんなことされたら俺が目立つかもしれんだろ」他にやり方があるだろう、ということなのだが、井高は、(あれ、なんで私は今怒られてるのかな)といまだにきょとんとしていた。