ストーリーメイク(1月9日版)

今回は、

主人公(過去):知恵
主人公(現在):解放《逆》
主人公(未来):清楚《逆》
結末/目的:庇護《逆》
援助者:幸運
敵対者:生命《逆》
必ず使う言葉は「カーテン」

で話を作ってみました。

津雅樹:『COVERD』

○登場人物
 主人公:それなりに旧家の出。
 舞 台:その実家。それなりに大きい農家。2階建ての蔵がある。


○ストーリィ
 主人公の父親が亡くなり、彼は葬式のため、かつて暮らした自身の家へと舞い戻った。父はあまり好きではなかったが、持ち前の頭脳と器量で一流企業に勤めたはいいものの、その仕事に忙殺され息も切れ切れの彼には、体の良い休暇と思えたのだった。
 遺品の整理等を行ううち、たまたま彼は蔵の奥へと足を踏み入れる。ところどころにある窓から差す光が、うっすらと舞うほこりを照らしている。もう主人公が何年も入っていない蔵であったが、彼はひとつ思い出したことがあった。
 彼は幼いころ、よく懲罰としてこの蔵の2階に軟禁されたのだが、その蔵2階の最奥、東側の壁――さらにその北端にある窓には何故か古びたカーテンが引かれているのである。ほかの窓には一切なく、その窓だけである。しかし、その窓の前がもので埋まっているかといえばそうではなく、不気味に棚がその前を退き、1本の通路をかたちづくっている。久々に彼がそこを訪れてみると、やはり、ある種の異様さをもって、そのカーテンのかかった窓は、そこにあったのであった。
 かつて彼は、彼の祖父に尋ねたことがあった。
「なぜ、蔵の2階のあの窓にはカーテンが引いてあるの」
「さあ、わからない。わしが子供のころから、カーテンはしてあったのだよ」
「ほかの窓には、カーテンがないのに。なぜ、外さないの」
「ずっと、外してはならないことにないっていてね、あれは外してならないのだと、わしもきつく言われた――もしあれを外せば、鬼にヘソを取られるぞ、と言われてね」
「雷様でもいるの」
「わからぬが、一種の願掛けのようなものなのだろう」
「開けてみようかな」
「それはいけないよ」
「なぜ。ただの窓なんでしょう」
「たしかにそうだが、昔からの言い伝えだ。昔からの言というのは、ときに本当のことがあるからね、そういう言いつけは守っておいた方がいいのさ」
「ふうん」――それきり、彼はそのことを忘れたのであった。
 なんとはなしに、そのカーテンが気にかかりはじめた主人公は、折を見て、同じく葬式のために戻ってきていた伯父に、カーテンについて尋ねてみる。しかし、やはり祖父がかつて主人公に告げた以上のことは、伯父の口からは出てこなかった。
「しかし、開けてはいけないと、たしかによく言われていたよ。なにか、タブーのようでもあった」
 葬式よりも何よりも、カーテンのイメージが主人公の脳裏をよぎり続ける。いったい、何を覆っているのか――窓ではないのか、外から蔵を見ればたしかにそこに窓はあるのだ。ほんとうに鬼の侵入を防ぐための願掛けなのだろうか。そのイメージは、彼の夢にも登場するほどであった。
 葬式の全行程が終了し、明日にも実家から去ろうかという夜、主人公は蔵に赴く。いま実家を去る前にあのカーテンを開けてみたい、という衝動がどうしても収まらなくなったからである。
 暗い蔵の中を、懐中電灯の光を頼りに進み、やがて件の《窓》へと辿り着く。どこか切迫した、緊迫した、不気味で重圧的な雰囲気がまとわりついているかのような錯覚を感ずる中、そのカーテンの端をつかみ、一気に開けた。
 そこは、舞台の上であった。彼は、舞台の上に立っているのであった。客席の半円形の配列が、そしてそこに座る対の眼の群れが彼を凝視し、視野を覆いつくしていた。
 主人公はうしろを振り返った。見れば、彼がいまやって来た蔵の中の〈セット〉が、平面的にベニヤ板で簡素に構成されていた。上を見れば、数々の照明が見え、その内のひとつが彼にスポットライトを当てていた。次いで、足音が聞こえてくる。
「だから、開けてはいけないと言っただろう」舞台の上手から歩いてきた伯父が言った。「もうこの世界も終わる。なぜなら、こちら――すなわちお前が向こうに気付いてしまったからだ。ごらん、視線が散ってゆく。興味を失ってしまったのだ。見るものは絶対でなければならない。見られてはいけないのだよ」
 主人公が客席の方を見ると、ぞろぞろと客が方々へ散ってゆくところであった。やがてその内、後ろの 〈セット〉が、舞台が、そして見つめる自分の手が、それらが構成されていたビットにまで解体・還元され、音も立てずまるで埃のように崩れ去った。

 正田展人:『真銀河・栗原絶体絶命』

 真銀河はたいへん長い話になるので、その一部だけ説明する。
 スイゲンという日本の会社は、水ビジネスと水素燃料生産で世界経済を席巻しようとしていた。4人が設立しており、日本人男性(社長)によるワンマン経営で、3人の女性が彼に助力することで、会社は急拡大を続けた。スイゲンには、国外での活動を主とする外事部があり、その中にはごく一部の従業員しか存在を知らない課があった。その課は、邪魔な企業をつぶしたり、日本政府のみならず海外の政府にも工作したり、経営陣を守ったりする仕事をしていた。その課に栗原という女性がいた。栗原は、人間ではなく、新世代と呼ばれる人造人間だ。新世代とは、スイゲンを設立した3人の女性によって生み出されており、人間を凌駕する身体能力を持つが、個体差はある。見た目は人間とまったく同じであり、スイゲンを支えるために活動していて、社会に溶け込んでいた。また、新世代は社長や女性に絶対服従するよう脳をいじられていた。以下は、スイゲンの2030年頃の話。
 栗原は、女性3人によって殺害されたはずの吉岡対策を任務としていた。吉岡は女性3人に協力していたが女性たちにとって邪魔になったので殺害されたが、いろいろあって生き返り、スイゲンの邪魔をしてきた。
 今回も吉岡によってスイゲンの活動が攻撃されたとのことで、出動した。吉岡も新世代を使って攻撃してくるのだが、今回は新世代が見当たらなかった。吉岡が今回使ってきたのは、虫のように動き回る全長30センチほどのメカだった。メカが背後から栗原に近づいたが、彼女はそれにすぐ気付いた。動きは速く栗原から遠ざかろうとしたが、飛びついて捕まえると、そのメカの精巧さがよくわかった。手に余る大きさで、10本の脚をずっと動かしてもがいているようだった。栗原は顔を近づけてしばらく見入った。すると突然メカが針を発射し、栗原の首に刺さった。痛みで小さな声をもらしてメカを投げ捨て、しゃがんだ彼女の視界は暗転した。
 気がついた栗原はまず白いカーテンを見た。カーテンの向こうには人影があった。両腕を動かそうとしたら縛られていた。天井から吊るされていた。人影が栗原のほうを向いて、カーテンが開いた。カーテンの向こうはコンクリートむき出しのそれほど広くない部屋だった。人影が顔を見せたが、栗原の知らない男性だった。男は、分かりやすく襲撃をしてスイゲンから出張ってきた新世代を生け捕りにしようとしたことを明かした。
 さらに、男は、吉岡側の新世代を増やすため、今回の栗原のように生け捕りして洗脳してきたが、栗原は洗脳不能だったためにこの部屋へ連れてこられたとも言った。逃げられそうにはなかったが、栗原は、洗脳されてスイゲン社長の敵となるよりはいいということを男に言った。その後、手足が自由にされることもなく、栗原は男を慰め続けるのであった。

 浅羽優:『第三種接近遭遇』

○登場人物
・浅田崇:高1。映画研究会の実質ひとりだけの会員。
・柴原志穂:高1。美少女。宇宙人に会ったことがあると言い張る。
・佐本操緒:高1。元読者モデル。引退して転校してきた。
田中敦紀:高2。SF研究会のひとりだけの会員。


○用語
『超装戦隊バトレンジャー』:映画研究会の本棚に詰めこまれていた脚本のうちの一本。敵の組織との闘いを終えたはいいものの、日常に復帰した他のメンバーと違っていまだに普通の生活に慣れないバトレンジャー・ブラックの悲哀を描く短編コメディ。


○ストーリー
 優秀な成績で名門進学校である神之木東高校に入学した浅田崇。映画が好きであったので、即座に映画研究会に入部するも、実態はペーパー・サークルで、活動している部員は彼だけ。正直、何かしたくても、何もできない。ひとつの部屋をカーテンで仕切って使っているSF研究会のただひとりだけの会員=会長である田中と駄弁りながら日々を過ごす。と、ある日、浅田と同じクラスの変わり者である志穂が部室にやってくる。宇宙人に会ったことがあると自己紹介をして周囲をドン引きさせていた志穂。彼女は、自分がかつて子供の頃に会った宇宙人について、もっとよく知りたいので、SF研究会に入部させて欲しいと言う。彼女を面白がってそれを承諾する田中。翌日から部室には志穂の姿が。SF研究会の本棚に蓄積されたトンデモ本を熱心に読みまくっている。黙ってりゃ可愛いのになあ、と思う浅田。
 志穂が部室になじんできた頃、東京からひとりの少女が転校してくる。元読者モデルの佐本操緒。浅田は小学生低学年の頃に彼女にめちゃくちゃいじめられていた。いじられていた。家の事情で転校して、何故かまた戻ってきた。元読者モデルという経歴を鼻にかけて、ちょっとお高い態度をとってしまう操緒。クラスの女子の反感を買い、いじめの標的になりかける。一度は、自業自得だ見捨てようと思う浅田だが、やはり可哀想になってしまって操緒の態度にフォローをいれる。いじめられないで済んだ操緒。ツンデレしながら浅田にお礼を言う。浅田惚れ〜。映画研究会に入部させてくれと言い出す。
 入部手続きを済ませ、部室にやってくる操緒。志穂と会話。宇宙人に会ったことがある、と断言する志穂に対して、操緒は強烈な拒否反応を示す。部屋を飛び出して行く操緒。それを追う浅田。水飲み場でゲロっている。落ち着いた頃に訊いてみると、モデルを引退した原因が、熱狂的ファンからの前世だの運命だのいうわけのわからない手紙だという話をされる。電波アレルギー。それでも浅田恋しで部室にやってくる操緒。やがて志穂を見ても逃げ出したりゲロったりはしなくなるが、それでも二人の仲はよくならない。ぎこちない。
 いつの間にか迫っている文化祭での部活動企画の締切。SF研究会と映画研究会でSF映画を撮影することになる。散らかりに散らかった映画研究会の部室の本棚を漁ると、過去に撮影した映画の脚本らしい冊子がぞろぞろと出てくる。SF映画かつ人数的にいけそうなのは、戦隊物のパロディである『超装戦隊バトレンジャー』だけ。
 浅田を主役のブラックに据えて撮影開始。作業は順調に進んでいくが、脚本の最後に出てきてブラックと対決する怪人をどうすればいいのか。昔に撮影したんだから、もしかしたら着ぐるみか衣装が残っているかもしれない、と部室にひとりでいる時に部屋を漁る浅田。果たして、それはあった。しかしその着ぐるみは、志穂がかつて会ったという宇宙人そっくりであった。つまり、彼女がかつて会ったのは、宇宙人などではなく、『超装戦隊バトレンジャー』の撮影をしていたかつての映画研究会の人間だったわけだ。事実を告げるべきかどうか迷った浅田。とりあえずやめておこう、と着ぐるみを段ボール群の奥深くにしまい、貸衣装屋から、一番安いイカの着ぐるみを借りてくる。
 イカの着ぐるみを着た志穂をブラックが退治するシーンを撮影して、何とか無事に撮影は終了。残すは編集作業のみ。とりあえず部室で打ち上げパーティをすることに。衣装を着て記念撮影。パチッ。そこで操緒、浅田が隠した着ぐるみを発見してしまう。衝撃を受けた志穂。イカ姿のまま、部室から逃亡する。志穂を探して、街中を捜索する浅田、操緒、田中。かつて「宇宙人」と出会った公園のベンチでしくしくと泣いている。操緒と田中が近寄っていくと暴れる。跳ね飛ばされる操緒と田中。結局、浅田が取り押さえることに。かぽ。とイカの着ぐるみを脱がせる浅田。ぐじゅぐじゅに泣いている志穂。浅田に抱きついてくる。おろおろしてしまう浅田。空気を読んだ操緒と田中、どこかへ消える。
 志穂、自分が宇宙人に出会ったことのある特別な人間ではなかったということを知った今、これからどうすればいいのかわからない、と浅田に言う。考える浅田。周囲からは青姦に励むカップルの声。こんな格好で、こんなところにいるのは充分特別だよ、と言う。一瞬、きょとんとして、それから微笑む志穂。「馬鹿みたい」「現実なんて、そんなものさ」「違う。そうじゃなくて、馬鹿みたいなのは、今の浅田の格好」黒塗りにしたフルフェイスのヘルメット、Tシャツ、バミューダパンツというブラックの衣装のままだったことに気づく浅田。苦笑。二人で一緒に部室に戻る。その背中を追う田中と操緒。操緒、「まだ諦めたわけじゃない」。田中、「じゃあお前はタコの着ぐるみでも着るんだな」。殴りかかる操緒。それを軽く受け流す田中。
 そして文化祭当日。連日徹夜の編集作業を何とか終えて作品を完成させ、田中に完パケのDVDを渡して部室でぶっ倒れている浅田。昼過ぎに目を覚ますと、そばにいる志穂。ぼーっとしている頭。これは夢だろうか? 「夢じゃないよ」という声。「現実だよ」浅田はふたたび目を閉じ、眠りに落ちる。